秋のある日の彼ら




 京都の安倍本家から、柿と栗が大量に送られてきた。
    のはいいといして、何故私が手伝わねばいかんのだ」
 果物ナイフ片手に、勾陣は傍らの紅蓮にぼそりと呟いた。
「仕方ないだろ。柿の半分が渋柿だったんだ。干し柿にするしか消費方法がないだろ」
「どうせなら初めから干し柿にして送ってくればいいものを」
「…まあな」
 同じように、こちらもナイフを手にした紅蓮が半ばうんざりと答える。
 会話をしている間にも、その手は休むことなくせっせと柿の皮を剥いていく。
 縁側に座る彼らの間には、まだまだ沢山の渋柿が箱に入って置かれていた。
 その中から一つ取り出し、くるくると回しながら皮を剥いた勾陣は、それを自分の側のザルに放り込んだ。
 一息ついて上を見上げると、雲ひとつない澄んだ高い空が視界に入った。どこからか、金木犀の芳香が漂ってきて、息を吸い込むと甘い香りが胸いっぱいに広がる。
 季節は、すっかり秋だ。
「昌浩にでもやらせればよかったんじゃないか?」
「あいつは中途半端に不器用だからこういう作業は向いてないな」
「違いない」
 きっと本人が聞いたら怒るであろう(事実ではあるが)台詞を言いながら、紅蓮と勾陣は顔を見合わせ、笑った。
 いささか将来が不安だが、そこはそれ、彰子がいるのだから大丈夫だろうというのが彼らの共通認識である。
 そのまま会話は終了し、また黙々と柿を剥く作業が再開された。
 箱が空になるまでの道のりは、まだまだ遠い。

fin.

拍手お礼より再録
栗は旦那がせっせと処理しましたとさ
きっと昌浩が柿を剥いたら元のサイズの半分ぐらいになるに違いない…

06.12.26.