8/2 ジェレ誕
ヴィレッタはなやんでいました。
というのも、明日はジェレミア卿の誕生日だというのになにをあげたらよいか思いつかないからです。
一年前の誕生日には、手作りの焼き菓子をあげました。
その前の年には、ジェレミア卿が好きな紅茶の葉をあげました。
「でも、今年はどうしよう。なにも思いつかない」とヴィレッタは小さくひとり言を言いました。
仕事をしているあいだじゅう、ずうっとあれこれ考えてみましたが、やっぱりよい考えはちっともうかびませんでした。
ジェレミア卿に「なにかほしいものはありますか」とたずねてみましたが、ジェレミア卿は「お前がいてくれればそれでいいのだよ」と言うばかりです。
ヴィレッタはますます困りました。そんなことを言われなくても、ヴィレッタはジェレミア卿のおそばを離れるつもりなどなかったからです。
この日二人は残業をしていたので、政庁を出たのはもう夜半近くでした。
空には丸い月がぽっかりとうかんでいて、星がちらちらとまたたいています。
ふたりは月の光が照らす路を歩きました。
ヴィレッタはいつものようにジェレミア卿の半歩後ろを歩いています。
前を歩くジェレミア卿の背中をながめながら、ヴィレッタはこっそりとため息をつきました。
贈り物は、考えついたには考えついたのですが、ジェレミア卿は喜んでくれるのでしょうか。
そう思いながらふと時計を見ると、ちょうど夜中の12時になったところでした。
ヴィレッタは「ジェレミア卿」とよびかけて、振り向いたその人のくちびるにキスをしました。
「お誕生日、おめでとうございます」
fin.
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