秋の気配
微かな肌寒さを感じて、ヴィレッタは纏った薄手のブランケットを胸元に手繰り寄せて身体を丸めた。
エリア11は9月になった。日中はまだ残暑が厳しいが朝方になると時折冷え込むようになる。
季節の変わり目なので体調管理にはくれぐれも気をつけなければいけないとわかっているが、こうやって素肌を晒して眠る癖は抜けない。ここは租界で、部屋は空調設備が整っているから大丈夫だろうと思っているのもその理由の一つだろう。
「…寒いのか?」
身じろぐ気配とともに背後から伸ばされた手に頬を摺り寄せると、もう片方の腕に腰を捉えられて引き寄せられた。
「ジェ、レミア卿…?起こしてしまいましたか?」
「構わん…」
耳朶を擽る少し掠れたジェレミアの声と腰に回された腕からじわじわと伝わってくる体温が心地よくて目を閉じた。先ほど見た時計の針はまだ起きるには早い時刻を指していたから、もう少しこのままでいても許されるだろう。
「風邪を引いても知らんぞ」
「卿がこうやって温めてくださるのならそのご心配は無用かと」
本人には見えていないだろうが口元に笑みを乗せてそう返すと耳元にジェレミアの忍び笑いを含んだ吐息がかかり、反射的に肩が震える。
「んっ…卿…くすぐったい…」
逃れるように身を捩ると逃さないとばかりに腰を抱く腕の力が強まった。
まだ眠りと目覚めの曖昧な境界を揺蕩っていたいのだという無言の主張をして、ヴィレッタはすっぽりと肩までブランケットにくるまった。
「君は私の相手をするよりもそっちの方がいいのかね」
「昨晩あれほどお相手をして差し上げたじゃないですか…」
言外に貴方のせいで疲れているから眠たいのだと伝えると、ジェレミアは不貞腐れたように鼻を鳴らした。
「おやすみなさい…」
「……ああ」
眠りの底に再び吸い込まれる間際に、優しいキスをされたような気がしたけれど、それは夢だったのだろうか。
fin.
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