こんな2期を期待していた
ヴィレッタはふとテーブルに皿を置く手を止めて顔を上げた。
( エリア11における反政府集団の活動は弱まりつつありますが、依然として黒の騎士団によるものと思われるテロ行為は )
かつて自分達が赴任していたエリアの名がテレビから流れ出してくる。僅か一年前の話とは言え、まるで遥か昔の出来事であったかのように感じられた。
エリア11という響きは二人にとって特別な感情を引き起こさせる。だがそれは懐かしいと形容できるような代物ではなく、むしろ心の奥に仕舞い込んでいた暗いものを呼び覚ますものだ。
彼の地において黒の騎士団、そしてゼロは未だ健在であるらしい。行政府は、軍は一体何をやっているのだろうか。メディアを通して入ってくる情報によると、中華連邦もかなり介入してきているようだ。極東攻略の要であるエリア11の統治は盤石なものにしておかねばならないはずなのだが、そう上手くはいっていないのか。もっとも、報道がどこまで真実を伝えているのかも謎ではある。
「あのエリアは、相変わらずのようですね」
「ゼロ……」
全ての元凶である男の名を口にして、ジェレミアは忌々しげに顔を顰めた。無理もない。彼の人生はゼロによって狂わされた。それこそ、跡形もないほどに。
微かに震えるジェレミアの手にヴィレッタは自分のそれを重ね合わせ、隣に座った。
「……ジェレミア卿」
不安げな眼差しを向けると、ジェレミアは深く息を吐いて「大丈夫だ。心配はいらぬ」と答えてみせる。その言葉通りに落ち着きを取り戻した様子を確認して、ヴィレッタはほっと肩の力を抜いた。
初夏の風が二人の間を吹き抜け、カーテンをふわりと揺らした。
(それでは、次のニュースです。我がブリタニア帝国軍はエリア18に新たに戦力を投入し、治安の安定に向けた )
テロリストの掃討作戦を展開中であるとのニュースと共に現地の映像が右上に四角く映し出される。
アジトと見られる建物を包囲するサザーランドやグロースターの様子を捉えている中、特徴的な白いボディの第七世代ナイトメアフレームが画面の端、舞い上がる砂塵の向うを横切った。
枢木、スザク。
名誉ブリタニア人初の騎士となったあの若者は、現在皇帝の騎士、ナイトオブ・ラウンズの位を賜るという異例の昇進を遂げ、各地の戦場を転々としているらしいと聞く。
たかが惰弱なナンバーズよと見下していた相手が、気がつけば頭の上を飛び越えていて、手の届かぬ高みにいる。いつかそこへ昇りつめるのだと野心を抱いたこともあった。
しかし、公式には戦死扱いとなっているジェレミアと軍属を離れた自分にはもう関係のないことだ。
事実として受け止め、そう思えるようになるまでにはかなりの時間を要した。
「ジェレミア卿、朝食にしましょうか」
今ここにいるのは、それまで得た官職も身分も何もかもを捨て去った、ただの男と女だ。
fin.
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