些細な日常の中の大きな出来事 (六合×風音/現代)
数日ぶりに風音のアパートを訪れた六合は、玄関で出迎えた彼女が顔に焦燥の色を浮かべているのを見て取って、何かあったのかと首を傾げた。
仕事でへまをやらかしたとか、そういう類のものではないようで、六合は何となく、嫌な予感がした。
「何か、あったのか?」
「あのね、そのっ…」
「…落ち着け。どうした?」
抑揚の乏しい声に問われて、風音は幾分か冷静になったようだがそれでも、どうしよう、とずっと一人で呟いている。
六合はとりあえず勝手に台所を拝借すると、自分と彼女のためにコーヒーを淹れる。今更断らなくても、もしかしたら家主よりも台所事情を把握しているようなものだから別に構わないだろう。
両手にマグカップを持ってリビングに向かうと、相変わらず風音はソファに座ったまま思案顔をしている。
その目の前にカップを差し出し、自分も隣に腰を下ろす。
ありがとう、とカップを受け取った風音はコーヒーを一口啜り、ほうと息をついた。
「で、一体何があった」
「うん…、さっき晴明様経由で道反の母様から連絡があって…」
ぽつりと漏らされたその一言で、六合は何となく続きが読めた。
どうか、その予想が外れてくれと願いつつ、無言で先を促す。
「……嵬が、いなくなったって」
「それは……」
「たぶん、………こっちに向かってるんだと…」
六合は思わず額に手をやった。心なしか頭痛がする気がする。
そんな六合の様子を、風音はすまなさそうに伺って、そっとその肩に頭を寄せた。
「ほら、前の宅配便の件があったから、何かあったら知らせてって、母様にお願いしてたんだけど…」
「…ああ、……確かにあれは衝撃的だった」
「別に嵬に悪気はない…と思うんだけど…」
段々と風音の語尾は尻すぼみになっていく。
彼女も、勿論大好きな鴉に会えるのは嬉しい。が、その反面、六合との時間を邪魔されたくないとも感じている。
あの小さな鴉の行動も、自分の事を想ってくれている故だとは分かってはいるが、複雑なところだ。
「というか、今日出雲を出たとしていつこっちに来るんだ?できれば俺はいないほうがいいだろう?」
「えーっと…、…そもそも、今度は一体何で来るのかしら?」
「……さあ」
前回が宅配便だったから今回はゆうパックとか?いっそ意表をついてチルドパックとかクール便とか黒い猫がトレードマークの某社とか。
「………かもめーる?」
それは暑中見舞いだろう、と六合は心の中で思ったが、何も言わなかった。
fin.
かもめーるってなくなったらしいですね、そんな話