初参り不参加組
騒がしい面子が揃って初詣に行ってくれたおかげで、家の中は大変静かだった。いつもこうならばありがたいのに、と青龍は無表情の下でしみじみと思った。
クリスマスと大晦日返上で働いた分、元旦だけはSPの仕事は休みだ。道長氏本人は忙しく動き回っているだろうが、護衛には自分以外の者が就くから、ゆっくりと骨休みをすることができる。
台所のテーブルで頬杖をつきながらぼんやりとしていると、背後から「青龍」とよく知る声と共に、湯気の立つ湯呑みが差し出された。黙ってそれを受け取り、斜め向かいに座った天后とちらりと視線を交わした。
緑茶に口をつけて、天后は中断していた年賀状の仕分けを再開し始めた。山積みになったものを一枚一枚めくっては、裏を返して時折口元に小さな笑みを浮かべている。湯呑みを手のひらの中で弄びながら、青龍は「何が面白い……」と呟きを零した。
「あら、中々楽しいものですよ。……青龍は興味ないでしょうけれど」
最後に付け加えられた余計な言葉に、青龍は眉間に皺を刻んだ。そう勝手に決め付けるなと思う反面、確かに彼女の言う通りの部分もあるので、反論ができない。喉の奥まで出かかった文句を堪えた代わりに、椅子から立ち上がり天后の後ろに回るとその手の中にある年賀状を覗き込んだ。
「吉昌宛のものね。……可愛らしいわ」
近況を記した短い文と添えられた写真の中では娘を間に挟んで若い夫婦が寄り合って写っている。吉昌の法律事務所に勤める同僚の一人のようだ。まあ微笑ましいとは思うが、しかしそれ以上の感慨など浮かばない。「……さっぱりわからんな」と正直な感想を述べて、青龍は薄い色をした天后の髪をひと房すくい上げた。人型を取っていてもなお、彼女の髪の色は薄く絹糸のように柔らかい。
「あの……青龍?何です?」
「……別に」
困惑した目を向けてくる天后にはお構いなしに、すくっては落とすという行為を繰り返していると「構ってほしいんですか?」と些か的外れな問いが続いた。何故、そうなる。
むっとしたこちらの気配を察したのか、「ごめんなさい、違いました?」と謝罪を口にするも、悪びれた様子はない。くすくすと、珍しく声を立てて笑っている天后は、楽しそうだった。
「でも、どうしたんです?貴方がこんなことをするなんて」
ひとしきり笑ってから首を傾げた天后の頬に指をすべらせると、白い肌が仄かな朱に染まる。
「ちょっと……青龍」
「……誰が構えと言った」
耳元でわざと意地悪く囁いてやりながら、ふとこのことが勾陣に知れたらどうなるだろうかと、そら恐ろしい考えが背を滑り落ちて言った。
fin.
正月フリーの副産物
09.2.27.memoから移動